牛乳やヨーグルトでにんにくの臭いを消す方法
牛乳やヨーグルトなどの乳製品はにんにくの臭いを消すメジャーな食品のひとつであり、にんにく好きの間ではよく知られていることです。
実際ににんにくの臭いを消すために牛乳を飲む人は多く、過去に放映された某バラエティ番組による「にんにくの臭いを消すために利用する食べ物」というアンケート調査でも断トツ1位は牛乳でした。
あの牛乳のねっとり感が粘膜を張って臭いを包み込むイメージが強いのかもしれません。
牛乳やヨーグルトなどの乳製品にはにんにくに限らず臭いを消す作用があるとされ、調理において肉や魚の臭みとりに牛乳が有効というのは言わば常識でもあります。
しかし「牛乳がなぜニンニクの臭いを消すのか?」という問いに対して、まだ明確な答えは無く、また、「牛乳にはあまり効果が無かった」という声が多くあるのも事実です。
本当に牛乳にはにんにくの臭いを消す効果があるのでしょうか?
ここでは、そのようなにんにくに対する牛乳の消臭作用や効果的に臭いを消す方法を調べましたのでご興味あればご覧ください。
尚、牛乳に限らずにんにくの臭いの消し方を知りたいという方はこちら(にんにくの臭いを消す11の方法)をご覧ください。
本当に牛乳はニンニクの臭いを消すのか?
「牛乳がにんにくの臭いを消す」というのはいくつかの研究論文で報告されている事実です。実験結果等を見ると、即効性はありませんが通常の場合と比べると臭いが消えるまでの時間が大幅に短縮されていることが分かります。
某バラエティ番組では、にんにくの臭いを消すと言われる「牛乳」「りんごジュース」「緑茶」「コーヒー」の消臭比較実験を行ったところ「牛乳」は「りんごジュース」に次いで消臭効果が高いという結果になっていました。
しかも、牛乳以外は暫くして臭いが復活してきたのに対し、「牛乳」は臭いが復活することは無かったということです。
※にんにくの臭いが復活するのは代謝によってアリルメチルスルフィドが発生するため。(詳細はこちら)
尚、牛乳やヨーグルトよりやや消臭効果が落ちますが、豆乳でもにんにくの臭いが抑制されるという研究報告があります。
牛乳がにんにくの臭いを消す仕組み
牛乳がにんにくの臭いを抑制するのは確かと言えますが、その仕組みは明確には解明されていません。
しかし、多くの研究で推測されている仕組みは一致していて、それは牛乳中のコロイドが作用して臭いを吸着しているということです。
コロイドというのは液体に固形分の粒子が分散している状態のことです。固形分の内容にもよりますがコロイドには物質を吸着する性質があります。
牛乳は液体ですが、一般的に約10%の固体成分が含まれているコロイド溶液です。
牛乳の固形分の多くはたんぱく質と脂肪です。このたんぱく質と脂肪がにんにくの臭い成分を吸着してニオイを消していると考えられているわけです。
ある研究においては、牛乳に含まれるたんぱく質のひとつであるカゼインがニンニクの臭い成分を吸着したことが確認されています。
牛乳は脱臭作用によって臭いを消す
吸着によって臭いを消す方法のことを「脱臭」と言います。
臭いを消す方法としては主に「消臭」「脱臭」「マスキング」というものがあります。
「消臭」は臭いを消す一般的な用語としても使われることもありますが、基本的には化学変化によって臭い成分を変化させ臭いを消すことを言います。
「マスキング」とは臭いに他のニオイを被せることによって元の臭いを感じさせなくする方法です。
「脱臭」は「消臭」に比べて特定の臭い成分に対する消臭力は弱いですが、消臭成分を選ばないため、幅広い臭い成分に対して効果を発揮するという特徴があります。
にんにく臭の元凶であるアリルメチルスルフィドは、化学変化を起こしにくいため消臭しにくい物質ですが、脱臭であれば臭いを消せる可能性が高くなります。
もっとも、牛乳がアリルメチルスルフィドを脱臭できるのは小腸内の短時間なので効果はそれほど大きくありません。それでも、アリルメチルスルフィドを発生させる物質を吸着することができるので、結果的にアリルメチルスルフィドの発生を抑制し、にんにくの臭いを軽減させています。
にんにくを食べた直後の臭いを消すことは難しい
にんにくを食べた後の臭いは大きく2種類に分けられます。
一つは「にんにくを食べた直後ににおう臭い」で、二つ目は「にんにくを食べて1時間後ぐらいからにおってくる臭い」です。
この二つの臭いの詳しい内容はこちら(なぜ、ニンニクは臭いのか?)を参照頂くとして、一つ目の「にんにくを食べた直後ににおう臭い」の原因の多くは口内に残ったにんにくの残留物によるものです。
この臭いを消そうとして牛乳を飲んでも、口内では残留物と牛乳が接触しにくく、臭い成分を吸着しにくい状況にあるため、ニンニクを食べた直後の臭いを牛乳で消すことは難しいと言えます。
つまり即効性は期待できません。
それどころかにんにくの臭いと牛乳のにおい、そして両者の残留物によって増加するメチルメルカプタンなどの口臭物質によって、かえって臭いが強烈になる可能性があります。
牛乳を口でゆすぎながら飲めば口内のニンニクの臭いを消せる可能性はありますが、逆に牛乳の臭いがキツくなるでしょうし、なにより気持ちの良いものではありません。
少しでも乳製品で即効性を期待したい場合は、口の中に残りやすく爽やかな香りのするヨーグルトを使うと良いでしょう。
もっとも、即効性だけを期待するのであれば、歯と舌を磨いてガムを噛んだ方が効果的です。
牛乳でにんにくの臭いを消す効果的な方法
牛乳でニンニクの臭いを消す効果的な方法を知るには、まずは牛乳が効かないケースを理解するのが早道です。牛乳はやり方を間違えると全くにんにくの臭いを消すことができません。
牛乳が効かないケース
「牛乳を飲んでもにんにくの臭いは消えなかった」もしくは「臭いが酷くなった」という声も少なくありません。
これはどういうことでしょうか?
こういったケースには次のようなことが考えられます。
少し詳しくご説明します。
牛乳に対してニンニクの量が多すぎる
当然のことですが、牛乳の脱臭限度を越えるにんにくの量を食べれば臭いを消すことはできません。
一般的にニンニクの臭いを消すには200ml程度の牛乳を飲む必要があると言われることが多いですが、ニンニクをたくさん食べれば、当然それだけでは足りなくなります。
基本的にニンニクをたくさん食べれば、その分多くの牛乳を飲む必要があります。
ニンニクと牛乳のにおいが混ざって臭いがキツく感じる
「にんにくの臭いを消すために牛乳を飲んだら余計臭いがキツくなった」という話しをよく聞きます。
個人的な感想では牛乳嫌いな人に多い意見のような気もしますが、確かににんにくと牛乳のニオイが混ざった口臭はかなり強烈な臭いがします。
ある実験でも牛乳を飲んだ直後の口臭はニオイが強くなることが確認されています。ただし、これは一時的なものと言えますので気にする必要があまり無いでしょう。
牛乳の飲むタイミングが遅すぎる
牛乳が効かない原因の多くはコレでしょう。
「牛乳がにんにくの臭いを消す仕組み」でご紹介したように、牛乳はコロイドの作用によりにんにくの臭い成分を吸着することでニンニクの臭いを消します。
つまり、にんにくの臭いを消すには牛乳がにんにくの臭い成分と接触する必要があるわけです。
牛乳の飲むのが早すぎても遅すぎてもにんにくの臭いは消せません。
にんにくを食べた翌日、にんにくの臭いがクサいからと言って牛乳を飲む人も多いようですが、翌日ではにんにくの臭い成分は既に血中に吸収されていて、牛乳と接触することはありえないので全く効果は無いでしょう。
「量」と「タイミング」がにんにくの臭いを消すポイント
牛乳が効かないケースから分かるようにニンニクの臭いを消すために牛乳を使う場合は「飲む量」と「飲むタイミング」が重要なことが分かります。この二つが牛乳でにんにくの臭いを消す効果的なポイントとなります。
それぞれもう少し詳しくご説明します。
ポイント1:「牛乳を飲む量」
前述したように、にんにくを食べる量が多ければ、その分牛乳も多く飲む必要があります。
ある実験結果を見ると30gのすりおろしニンニクに対し、200ml程度の牛乳で95%の脱臭率(ただし測定対象はにんにくの臭い成分であるアリルメチルジスルフイドおよびジアリルジスルフィド)が確認された報告があります。
30gというと大体にんにく3~4片分であり、200mlというとコップ1杯分ぐらいです。ただし、これはあくまで試験管内の実験で非常に効率のよい環境での結果です。
実際の食事の場合は、他の食べ物やにんにくと牛乳が口に入るタイミングのズレによってかなり脱臭率が落ちるはずです。そのため実験時よりも牛乳の量を増やす必要があると思われます。
量が多いほど脱臭率は高まると思われますが、私的な感覚としては3~4片のにんにくに対してコップ2~3杯分ぐらいの牛乳というのが一つの目安と思われます。
牛乳の量は「にんにくの臭いの強さ」および「臭いの継続時間」に影響し、量が多い程、にんにくの臭いが弱まり、また臭う時間が短くなります。
しかし、どんなに多くの牛乳を飲んでも飲むタイミングを逃すとほとんど効果はありません。そのことが次のポイントとなります。
ポイント2:「牛乳を飲むタイミング」
これが一番重要です。
「にんにくの臭いを消すにはいつ牛乳を飲めばよいのか?」というのはよく聞かれる質問です。
食べたニンニクと牛乳が接触する可能性があるのは口から小腸までの消化器官内です。しかし、にんにくの臭い成分は小腸に来て、順次体内に吸収され血管を通して体臭となってしまうため、効率的な牛乳の脱臭チャンスは口から胃もしくは十二指腸までの間でしょう。
食べたモノは口に入ってから胃で消化されるまで2~4時間と言われますから、遅くともニンニクを食べてから2時間以内に牛乳を飲まないと効果的な脱臭は期待できないと思われます。
最良の方法はにんにく料理を口に入れる度に牛乳を飲むことですが、それでは折角のにんにく料理を味わうことができなくなります。
現実的で効果的なのは、まずにんにく料理を食べる前に牛乳をコップ1~2杯飲んでおきます。そして食後すぐに牛乳をコップ2~3杯飲む方法でしょう。
できればその後2~3時間は定期的に牛乳を飲むと良いでしょう。食前食後に飲む牛乳の量を増やせば脱臭効果も高くなります。
実はタイミングに関して言うと、もっと確実ににんにくの臭いを消すタイミングがあります。それは「料理に牛乳を使う」ことです。こちらに関しては後述の「調理時に牛乳を使ってにんにくの臭いを消す方法」で詳しくご説明します。
脂肪分が高い牛乳の方が消臭効果が高い
ある研究報告では脂肪分が多い牛乳の方が消臭効果が高かったことが確認されています。これはにんにくの臭い物質を脱臭するのが、主にたんぱく質や脂質によるものであるためと思われます。
牛乳の脂肪分は、成分表示の「乳脂肪分」という項目で確認できます。通常の牛乳は乳脂肪分が3.0%以上なので、そういったものを選べば良いでしょう。
逆に低脂肪牛乳や無脂肪牛乳だと消臭効果が落ちる可能性があります。
乳脂肪分はカロリーと関係するのでダイエットをしている人などは低いもの選びたくなると思いますが、にんにくを食べた日だけは高いものを選びましょう。
にんにくの臭い消しに牛乳を使う場合の注意点
牛乳でにんにくの臭いを消そうとする場合に気をつける点があります。
それは前述している通り、にんにくを食べた直後に牛乳を飲むと両方の臭いが混ざって口臭が酷くなるということです。
これは一時的なものなのですが、このタイミングでうっかり人と話すようなことがあれば、相手に不快感を与えることは間違いありません。
この問題を解決する方法としては牛乳を飲んだ後すぐに歯磨きと舌磨きをすることがベストです。それが無理な場合は水で口をゆすぐだけでもかなり軽減されるはずです。
パセリや消臭効果のあるハーブなどを一緒に食べることも効果的でしょう。
調理時に牛乳を使ってにんにくの臭いを消す方法
牛乳を使ってにんにくの臭いを消す方法で一番確実なのは、調理段階で牛乳を使うことです。
料理の下処理の段階においてにんにくと牛乳を接触させることで効率的に臭い成分が吸着され、にんにくの臭いが軽減します。
牛乳を使った下処理方法
牛乳を使った下処理の方法は「にんにくを切った後、牛乳に漬ける」というものです。この方法は牛乳で肉や魚の臭みをとる方法と同じです。
注意点は「にんにくを切った(もしくは潰した)後」という部分です。にんにくは傷つけられない限り臭い成分を発生させないので「にんにく丸ごと」を牛乳に漬けても意味がありません。
よく他のサイト等で、にんにくを丸ごと牛乳に入れて煮込むという方法が紹介されていますが、この場合は「加熱」するという条件があることをご認識ください。この点に関しては後述します。
牛乳に漬けたにんにくはキッチンペーパーなどで牛乳を拭き取れば様々な料理に使えます。ただ、やはり多少はにんにく臭さと牛乳臭さが残るので用途は限られるでしょう。少なくとも生のまま使うのは難しいでしょう。
更に効果的ににんにくの臭いを消す下処理
にんにくを切って牛乳に漬けるだけだと、切断面以外の部分に臭い成分の元であるアリイン及びアリナーゼが残っているため完全に臭いを消すことはできません。
ですので、少しでも臭いを消すためには切断面を多くする必要があります。みじん切りや潰すことなどがその方法になりますが、もっとも効果があるのは「すりおろしたニンニク」を牛乳に漬けることでしょう。
ただ、すりおろしのニンニクを牛乳に漬けてしまうと味や風味が完全に損なわれニンニクを使う意味がなくなります。多少臭いは残りますがスライスぐらいが現実的だと思います。
にんにくを丸ごと牛乳に漬ける方法
既述の通り、ニンニクのかけらを切らずに丸ごと牛乳に漬けても臭いは消せません。
しかし、にんにくの臭いを消すレシピなどで「にんにくを丸ごと牛乳に入れて煮る」というものがあります。そして、実際にかなりニンニクの臭いが消えます。
このことは先程「丸ごと牛乳に漬けても意味がない」とご説明したことと矛盾していると思われるでしょうが、この方法は牛乳というより「加熱(煮る)」することがにんにくの臭いを消すメインの作用となっています。
つまり、牛乳で煮る必要はなく水でも構わないのです。もっと言うと水も必要ありません。ただ加熱するだけでにんにくの臭いはかなり無くなります。ただし、加熱する場合は牛乳の場合と違い「丸ごと」である必要があります。
では、「牛乳で煮る」意味とは何なのでしょう?
この場合の牛乳はあくまで補助的な作用となります。
加熱した時点でかなりにんにくの臭いは消えているはずですが、完全に消えていない可能性があります。
そうすると、そのにんにくを切った場合や食べた時ににんにくの臭い成分が発生することになります。その臭い成分を除去するのが牛乳の作用になります。
にんにくは牛乳に漬けられているわけですから、臭い成分が発生しても吸着しやすい状況にあります。
臭い成分が少なくなっている上、臭い成分を吸着しやすい状況となるこの方法は更に効果的に牛乳でニンニクの臭いを消す方法のひとつと言えるでしょう。
牛乳でのにおい消しが適したにんにく料理とは?
実は調理においてにんにくの臭いを消す一番手軽で効果的な方法は「加熱」することです。既述の通り、加熱と牛乳を掛け合わせることで更に効果的にニンニクの臭いを消すことができますが、手間を考えると加熱だけで済ますことが現実的でしょう。
では、臭いを消すのに加熱せず、牛乳だけを使った方が良いにんにく料理とはどんなものがあるのでしょうか?
結論から言うと、「にんにくを柔らかくしたくない料理」もしくは「まずにんにくをカットする必要がある料理」に使う場合は牛乳が適していると言えるでしょう。
にんにくを加熱するとどうしても柔らかくなってしまいます。柔らかくなるとカットがうまくいかないというのがその理由です。
と言ってもニンニクが柔らかくて困る料理というのはそれ程無いので、思いつくのは「にんにくチップス」を作る時ぐらいでしょうか。
調理時に牛乳でにんにくの臭いを消す場合の注意点
調理段階でにんにくの臭いを消すために牛乳を使う場合は以下の注意点があります。
にんにくの風味が無くなる
にんにくを料理に使う理由はなんと言っても「食欲をそそる香り」を出すためです。この香りはジアリルジスルフィドという成分によるものとされますが、この成分が体内で代謝されると例のクサい臭いに変化します。
つまり、調理段階でにんにくの臭いを脱臭するということは、あの「食欲をそそる香り」を無くすと言うことなのです。
にんにくの効果・効能が失われる可能性がある
これは牛乳に限らず、また調理段階に限らず言えることですが、体内に入る前にニンニクの臭いを消すと、にんにくの効果や効能が失われる可能性があります。
にんにくに期待できる効果や効能はこちら(にんにくの効能&効果21選)を参照頂ければと思いますが、これらニンニクの効果や効能はニンニクの臭いと密接な関係があります。
簡単に言うと、多くのニンニクの効果や効能はにんにくの臭い成分が有効成分となっているのです。
つまり、にんにくの臭い成分を除去するということは、効果や効能を除去することにもつながるのです。
ただし、牛乳の場合は臭い成分を吸着するので臭いを吸着した牛乳をそのまま料理に使って食べれば効果や効能を得ることができるかもしれません。
特に、少量ですが牛乳にはビタミンB1が含まれているため、それがにんにくの臭い成分の大もとであるアリシンと結合し、アリチアミンを産生させることも期待できます。(アリチアミンに関しては「ビタミンB1の吸収を高める効能」を参照ください。)
更にはにんにくをオイルなどに漬けると血液サラサラ効果が高まるなど通常の効能が強まるケースもあるので、牛乳の場合もそのようなことが起こっている可能性はあります。
しかしながら、牛乳に漬けることによるニンニク成分の変化を研究したような論文等は見当たらないため、現在のところは単純に効果や効能は弱まると考えるべきでしょう。
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