肝機能強化・肝臓障害予防
にんにくは肝臓に効果のある食べ物として紹介されることが多くあります。にんにくが肝臓に良いということは昔から伝えられてきましたが、その根拠は漠然としたもので、恐らく経験的なものが大きいと思われます。
しかしながら、にんにくの効能を調べていくと肝臓に効果的なものがいくつかあることが分かります。研究報告も多くはありませんが、肝臓に対する有用性を示すものがいくつかあります。
ここでは、「肝臓の働きや性質」と「にんにくの効能」を照らしわせてにんにくの肝機能強化や肝臓障害予防効果を検証したいと思います。
肝臓の働き
肝臓は体の中でもっとも大きな臓器で、その重さは約1Kgあると言われます。その大きさや重さに比例して肝臓の働きも極めて重要なものです。
肝臓の働きはおよそ200もの独立した働きがあると言われます。色々な解釈がありますが、その働きを6つに纏めると次のようになります。
- 胆汁を作り、分泌する
- たんぱく質、脂質、糖質などの栄養素の代謝
- 解毒作用
- 血液凝固作用
- 母体内にいる赤ちゃんの造血作用
- 体温調節作用
このように肝臓は人が生きていく上で非常に多くの重要な働きをしています。特に栄養素の代謝と解毒作用は生命の基本であるため、肝臓が弱ると急激に体力が弱ります。
肝臓は非常に丈夫な臓器で、これだけ負荷の大きい役割を果たしているにも関わらず他の臓器と比べると致命的な病気になることはあまりありません。
しかしながら、現代の生活には肝臓に負担をかける要素が多々あります。肝臓が弱ると疲れやすくなったり、病気になりやすくなります。原因が分からないが何となく調子が悪いといった場合は肝臓が弱っている可能性があります。
肝臓に負担をかける要素
前述したように肝臓は丈夫な臓器で、自身を再生させる能力さえあります。しかしながら、肝臓への負荷が多くなると、「脂肪肝」「肝硬変」「肝炎」「肝臓癌(ガン)」と言った病気に発展します。
しかも肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、病気が進行しても痛みなどの自覚症状に出にくく気がついた時には深刻な状態になっていたということがよくあります。
そのため、肝臓の状態を調べるためにAST(GOT)及びALT(GPT)という数値を使います。両者はいずれも肝臓内にある細胞に含まれるある酵素の数ですが、この数値が高くなると肝臓が弱っているということになります。
一般的にこの数値を上げる要因には次のようなものがあります。
- アルコール
脂肪肝や肝硬変の代表的な要因です。肝臓の代謝機能に負担をかけ、限度を越えると代謝機能が追いつかず、肝臓に中性脂肪が溜まり、肝臓を弱らせていきます。 - 脂質・糖質の摂り過ぎ
脂質や糖質も肝臓で代謝されますが、これらを摂り過ぎると代謝できず中性脂肪が溜まっていきます。アルコール同様、中性脂肪が溜まると肝機能が弱まり脂肪肝や肝硬変のリスクが高まります。 - 活性酸素
代謝できなかったアルコールや脂質・糖質よって蓄積される中性脂肪に活性酸素が結びつくと過酸化脂質という非常に有害な物質に変化します。肝臓は過酸化脂質を分解する働きもありますが、その作用は肝臓に多くの負担をかけるだけでなく、処理できなかった過酸化脂質は肝臓障害全ての要因となります。また、肝臓以外でも動脈硬化を進行させる要因となり、体全身に影響を及ぼします。また、単純に肝臓は活性酸素を分解する役目もあるため、活性酸素が多く発生すると肝臓への負担も増加することになります。 - 有害物質
有害物質とは、細菌や毒類、ウィルス、薬物、化学物質などです。これらは肝臓の解毒作用によって分解され、排出されますが、肝臓の負担を大きくする要因でもあります。 - 肝炎ウィルス
ウィルスの中でも肝炎に直結するウィルスで、A型からE型まであります。この肝炎ウィルスに感染すると肝臓が炎症を起こし、肝炎、肝硬変、肝臓癌と進行していきます。 - ストレス
ストレスと肝臓には密接な関係があります。ここでは詳細は割愛しますが、ストレスに対応するために肝臓は様々な働きをしようとします。また、免疫機能が弱ることによる解毒作用のために肝臓に負担がかかったり、ストレスにより肝臓への血流が悪くなり肝臓の働きに影響がでます。また、ストレスは脂肪肝の原因にもなります。 - etc.
これらの要因は肝臓の働きを更に過酷なものにし、肝機能を弱らせる原因となります。これらの負荷が継続的につづくと脂肪肝や肝炎などの肝臓障害に発展するようになります。
にんにくにおける肝機能強化・肝臓障害予防効果の仕組み
にんにくの肝臓に対する効果は主に肝機能の負担を軽くすることによって、肝機能を強化したり肝臓障害を予防するという意味になります。
にんにくにおける肝機能の負担を軽減する効能とは主に「糖質の代謝促進」「抗酸化作用」「抗菌・殺菌作用」の3つです。
糖質の代謝促進
肝臓が糖質を代謝する際に必須なのがビタミンB1です。しかし、ビタミンB1は調理過程で失われやすく、体内に摂取しても消化吸収されにく物質です。しかも必要以上のビタミンB1は排出されてしまうため体内に貯蔵もできません。
つまり、ビタミンB1は非常に不足しやすい物質なのです。ビタミンB1が不足すると糖質の代謝ができず、肝臓に負担がかかることになります。
にんにくに含まれるアリシンはビタミンB1と結合することでアリチアミンという物質に変化します。アリチアミンはビタミンB1を調理過程で失われにくくし、また消化吸収をスムーズにします。また、血液中に蓄えておくことができるようになるため、ビタミンB1を不足を大きく軽減します。
このにんにくの効能により、肝臓における糖代謝不足が軽減され肝臓の負担を軽くする効果があります。
抗酸化作用
にんにくには活性酸素を除去する強力な抗酸化作用があります。これはにんにくに含まれるビタミンE(αトコフェノール)やポリフェノール類、そして硫黄化合物によるものと考えられています。
前述の通り、活性酸素は肝臓内で中性脂肪と結びつき過酸化脂質を発生させる主要因です。そして肝臓はその活性酸素や過酸化脂質を分解する働きを持っているので、にんにくの抗酸化作用はその負荷を軽減することができます。
また、にんにくの抗酸化作用は過酸化脂質の発生を抑制するので、脂肪肝や肝硬変、肝臓癌といった肝臓障害を予防・改善する効果もあります。
抗菌・殺菌作用
にんにくには強力な抗菌・殺菌作用があります。これは主ににんにくに含まれるアリシンという成分によるものです。調理等でアリシンは他の様々な物質に変化しますが、その中のジアリルスルフィドやアホエンにも多少効力は落ちるものの抗菌・殺菌効果は継続します。
肝臓の働きで大きな負担になるのが解毒作用です。にんにくの抗菌・殺菌作用は肝臓が解毒する細菌やウィルスを排除する効能があるので、その点において肝臓の負担を軽減し、肝機能を強化する効果があります。
以上、3点がにんにくの肝機能や肝臓障害に対する効果です。中でも肝臓における活性酸素のダメージを考えると抗酸化作用は肝臓にとって非常に有用な効能と言えます。
ただし、適量の範囲のにんにく摂取ではこれら肝機能の強化や肝臓障害の改善に対する効果は極めて限定的と考えられます。肝機能の強化や肝臓障害の改善はあくまで生活改善が基本であり、にんにくはその他の食品や治療薬の補助と考えるべきです。
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