動脈硬化予防・改善
にんにくには動脈硬化を予防、改善する効能が多々含まれています。にんにくを大量消費する地中海地方では心臓血管患者が少ないという事実があります。その要因を研究する中で示唆されたのがにんにくの動脈硬化を予防、改善する効果です。
もっとも地中海地方の食べ物には魚類やオリーブオイル、ワインなど血管系に効果的ものが沢山あるので、にんにくの効果だけとは言えないと思われます。
にんにくの動脈硬化に対する効能は実験結果にも効果性を示唆するものが多く、ドイツでは日本の厚生労働省にあたるドイツ連邦保健庁の専門委員会の一つで、薬用植物を医薬品として承認するコミッションE(German Commission E)がニンニクを動脈硬化の予防、治療薬として認可しています。
同様にヨーロッパEUのハーブ療法における統一指標の機関であるESCOP(European Scientific Cooperative on Phytotherapy:ヨーロッパ植物療法科学協力機構)もにんにくの動脈硬化に対する効果を認めています。
動脈硬化とは?
動脈硬化とは血管内にプラークと言われる塊が付着して血管の弾力性が無くなり、また血管内が細くなることで、いくつかの深刻な健康被害を引き起こす病気です。
生活習慣病が問題になるのは、この動脈硬化の危険因子になるからです。それだけ動脈硬化は現代人がかかりやすい病気であり、致命的な症状につながる恐ろしい病気なのです。
動脈硬化が健康に及ぼす影響
動脈硬化は心臓や脳の損傷という致命的なダメージにつながる病気です。
動脈硬化自体の症状は血管が固くなったり細くなるだけですので、血圧が高くなり心臓などに負担がかかるようになります。高血圧は動脈硬化になる要因でもありますので、双方が影響しあうことで両方の症状がどんどん悪化していきます。
動脈効果が悪化すると血流が極端に悪くなったり、血管が破れたり、最悪の場合は血管が詰まって血流が完全に途絶える状態になります。このような状態の場合は次のような致命的な病気や症状になることがあります。
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 脳梗塞
- 脳出血
- 大動脈瘤
- 脳血管性痴呆
- 壊疽
動脈硬化の原因
動脈硬化はの直接の原因は血管壁にアテロームと言われる脂肪物質やカルシウムなどの塊が溜まる(プラークになる)ことです。その塊が大きくなって血管を固くし、細くします。
アテロームとは”おでき”のようなものと考えればイメージしやすいと思います。アテロームの主な材料となるのがコレステロールと中性脂肪です。これが活性酸素に反応することにより、過酸化脂質になります。
過酸化脂質は体内で異物と判断され、マクロファージという免疫機能が働き、これを排除しようとしますが、マクロファージでは過酸化脂質を分解できないので、マクロファージはそのまま死骸となります。そうなるとそのマクロファージもアテロームの一部となってしまい、アテロームが悪化します。
更に、アテロームによって傷ついた血管を治そうとして血小板が凝集(集まり固まること)し、”かさぶた”ができます。これが血栓と言われるものです。ちょうど”おでき”の上に”かさぶた”ができるイメージとなり、血管が更に細く、固くなり、動脈硬化が悪化します。
つまり、動脈硬化の主な原因は「コレステロール」、「中性脂肪」と「活性酸素」、そして「血栓」と考えることができます。
にんにくが動脈硬化を予防・改善する仕組み
にんにくが動脈硬化の予防や改善に効果的と考えられているのは、にんにくの持つ次のような効能の側面で動脈硬化の症状を軽減するためです。
- コレステロールを下げる効能
- 活性酸素を除去する効能
- 血栓をできにくくする効能
- 血管を拡張する効能
コレステロールを下げる効能
にんにくは「コレステロールの合成を抑制する効能」と「貯蔵されているコレステロールは排出する効能」という2つの側面でコレステロールを下げる働きがあるとされます。
にんにくに含まれるS-アリルシステイン、アホエン、ビニルジチインといった成分にはコレステロール合成に必要な補酵素の働きを抑制することで、コレステロールの産出を低下させる効能があると言われます。
また、にんにくに含まれるアリシンが変化してできるスルフィド類の成分は肝臓に蓄えられているコレステロールを胆汁へ排出する効能があるとされます。
このように動脈硬化の要因となるコレステロールを抑制することにより、動脈硬化のリスクを軽減できると考えられます。
活性酸素を除去する効能
にんにくに含まれるビタミンEや硫黄化合物には活性酸素を除去する抗酸化作用があるとされます。この効能は血管内に溜まったコレステロールから過酸化脂質に変化するのを抑制する効果があると言えます。
過酸化脂質にならないコレステロールはHDLコレステロール(善玉コレステロール)によって回収される可能性があるので、アテロームを進行させず動脈硬化を改善する効果が期待できます。
血栓をできにくくする効能
にんにくに含まれるジアリルスルフィド(DADS)、アリルメチルスルフィド(AMS)、メチルアリルトリスルフィド(MATS)、ジメチルトリスルフィド、アホエン、ビニルジチインといった成分には血小板凝集抑制作用という血小板の機能を抑制して血栓をできにくくする効能があります。
血栓は動脈硬化の主要因ではありませんが、動脈硬化を悪化させたり、動脈硬化の延長にある心筋梗塞や脳梗塞の要因を軽減する効果が期待できます。
血管を拡張する効能
にんにくに含まれる硫黄化合物には血管平滑筋を弛緩させることにより血管に弾力性を持たせ、血管を拡張できるようにするという効能が確認されています。また同じくにんにくに含まれるスコルジニンという成分には末梢血管を拡張する作用があると言われます。
血管を拡張することは直接動脈硬化の予防や改善にはつながりませんが、動脈硬化を促進させる高血圧を緩和し、動脈硬化によって血管が詰まるリスクを軽減させる効果が期待できます。
にんにくにおける動脈硬化予防・改善効果の留意点
にんにくに動脈硬化の予防や改善をする効果が期待できるのは間違いではありませんが、動脈硬化の根本的な原因を解決することはできません。
先にあげた「動脈硬化の原因」はあくまで二次的な要因であって根本の原因ではありません。
動脈硬化の根本的な原因は遺伝や老化などもありますが、基本的には生活習慣や食習慣です。具体的には「運動不足」「不規則な生活」「ストレス」「偏った食事」「食べ過ぎ」「喫煙」などです。
これらを改善しない限りいくらにんにくを食べても効果は期待できません。にんにくは食品で摂取する限り、あくまで動脈硬化の予防や改善の補助的な効果に限定されると考えて下さい。
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